早朝と夕暮れどきが最高。奈良の街が見渡せる
東大寺で一番好きな場所は?奈良の人に問うと「二月堂」と多くの人が返します。さらに「二月堂からの眺めが最高」とも。南大門をくぐり、大仏殿のさらに奥、石灯籠が並ぶ石畳を上がって行くと、山の斜面にどっしり建つ二月堂にたどり着きます。
大空とつながるような張り出した回廊からは、奈良の街が見渡せます。多くの人が訪れるこのお堂の一番人気は夕暮れ時。ここから眺める夕景の美しさは格別です。生駒山に沈む同じ夕日を1300年前、ここから見ていた人々がいた。そんな深い時の流れを確かに感じさせてくれる舞台です。
そしてまた、一番ぜいたくなのは朝、それも人の少ない早朝です。朝靄に包まれた境内はおごそかな雰囲気。回廊を上がれば目の前いっぱいに刻々と輝きを増す空と雲、朝日に照らされた大仏殿の屋根。思わず深呼吸したくなるような清々しい景色が広がります。


幻想の光景が待つ夜の二月堂で特別な体験を
二月堂は約1,300年前から続く奈良の一大行事、「お水取り(修二会)」の舞台です。毎年3月(旧暦2月)に、練行衆と呼ばれる僧侶たちが、人々の代わりに懺悔。国家の安泰や五穀豊穣などを祈ります。(Join記事リンク)その最中の失火で350年前に焼け落ちましたが、2年後に再建。
以来、変わらぬ姿を堂々と残す国宝の建造物です。それでいて、ここは24時間、いつでも訪れることができるのです。すなわち夜も、真夜中も。夕方が人気で、朝がぜいたく。ならば深夜の二月堂は、特別の体験が待つ場所です。しんと静まり返った境内に人はおらず、月明かりが頼り。
気配に振り向けば、鹿がこちらを見つめます。大仏の懐で鹿を友に進んでいくと、やがて闇に浮かぶような二月堂の幻想的な光景があらわれます。風情ある釣り灯籠に独特の大きな丸提灯。そのすべてに明かりが灯されて、別世界の美しさ。回廊からの眺めも素晴らしく、大仏殿をシルエットに奈良の街が輝きます。


一番絵になる裏参道で、古代の奈良にタイムトリップ
それでは東大寺で一番絵になる景色は?と奈良の人に再び問えば、「二月堂の裏参道」と多くの声が上がるでしょう。それは「最も奈良らしい景色」とも。大仏殿の北側の道を東へ進むと、土塀と石畳が続く緩やかな坂道が二月堂へと続きます。ここは東大寺の僧侶たちが暮らす塔頭(たっちゅう)寺院が並ぶ静かな小道。
古い瓦を埋め込んだ土塀や漆喰の白い壁が向き合い、奥には二月堂の舞台が映えます。表参道は多くの観光客でにぎわいますが、ここは穴場。ゆったり散策したい人にはおすすめです。静寂な時の中で奈良らしい情緒に包まれ、まるで古代にタイムトリップしたような気分にひたれます。
