これぞザ・日本酒。伝統製法「生酛造り」とは
水のようにクリアで甘くフルーティ・・・昨今の日本酒の大きなトレンドは、「飲みやすさ」がひとつのキーワードになっています。
宇陀(うだ)市にある<久保本家酒造>はその流れとは逆を行く、日本酒業界ではちょっと珍しい酒蔵。彼らが目指すのは、飲みやすさとは180度真逆にある「キレがあり、辛口」な男気な酒。「生酛(きもと)造り」という伝統的な手法で、日本酒本来の気骨ある味がつくられています。


日本酒は、ビールやワインのように酵母の活動により発酵させてつくる「醸造酒」にあたります。米と水から複数の工程を経てつくる日本酒ですが、<久保本家酒造>が注力する生酛づくりの特徴は発酵の度合いにあります。
日本で好まれる飲みやすい日本酒が「速醸(そくじょう)」という低発酵で行われるのに対し、生酛づくりで用いられるのは「完全発酵」。<久保本家酒造>では選び抜かれた少数の酵母で醸すため、完成までさらに時間をかけています。
米をすりつぶす「酛摺り(もとすり)」(画像上)、酵母を温める「暖気(だき)」(画像下)など、作業は全て昔ながらの手作業で行われます。根気強く、愛情と手間をかけ、渾身の酒は生まれるのです。
※作業画像は久保本家酒造提供
「日本酒大好き!」な蔵人たちが
美味いと思う味を追求
「自分たちが飲みたいお酒をつくっています。宴会しながらね!」笑顔で話してくれたのは、蔵の十一代目久保順平さん。酒づくりは久保さん含め蔵人5名の少数精鋭で行われます。今から10年程前に現在の製法に出会い、自分たちならではの味を貫いています。
<久保本家酒造>の酒づくりのもう一つのポイントは、料理とのマッチングです。
生酛づくりにより力強い旨みを手にした酒は、料理の味に負けることなく、さらなるマリアージュへと導きます。和食はもちろん焼き肉、フレンチまで、コクのある料理にもお勧めなのだとか。フレキシブルな食べ合わせの提案も、「ベースである日本酒をしっかり作っているからこそ推奨できる」と久保さんの頼もしい一言に納得です。


江戸時代へタイムトリップ。
旧商家の邸宅で味わう格別の酒
<久保本家酒造>の酒は店舗で購入できますが、併せて訪れたいのが古い邸宅と蔵を改造して作った「酒蔵カフェ」です。200年~300年前の江戸時代の建造物で、さながらリアルな歴史資料館のような空間です。醸造所のすぐ横にあるため、時々ふっと香る酒粕の香りが鼻腔を癒します。


日本酒が生まれた地でぜひ味わいたいのは本日の「利き酒セット」です。3種類の日本酒を飲み比べることができるうえ、酒肴もセットに。奈良漬、酒粕漬けクリームチーズなど日本酒とベストマッチな品々との出会いも楽しみです。
ヘルシーさで注目される糀を使った糀ドリンク、酒粕スイーツもこちらの名物。ノンアルコールなのでドライブの立ち寄りの方には、カフェメニューがお勧めです。

INFORMATION
- 久保本家酒造
- 時間
- 直売所 8:00~17:00/酒蔵カフェ11:00~16:00 <定休>直売所 不定休/酒蔵カフェ 月曜・火曜 ※冬期(12月~2月)は営業日変更の場合もあり。要問合せ
- 住所
- 奈良県宇陀市大宇陀出新1834
- 入場料
- 酒蔵カフェ 本日の利き酒セット(大)各60ml 800円ほか
- お問い合わせ
- 0745-83-0036(久保本家酒造)、0745-83-0010(酒造カフェ)