素朴ゆえに奥深い、ニッポンのソウルフードを訪ねて
日本では昔から家族団らんのおやつと言えば、お米から作る米菓子が定番。切った餅を焼いたり揚げたりというシンプルな製法なだけに、作り手の微妙な加減が味の決め手になります。材料の質はもちろん、気温・湿度など、その土地に合った製造法が伝えられてきました。
豊かな自然環境と名水の里で知られる洞川(どろがわ)温泉にも、オリジナルな米菓子「かきもち」が受け継がれ、名物となっています。食パンのように四角く平らで薄い形、口どけの良い細やかな食感が洞川流です。
昔ながらの製法を守りつつ、近年工房も完成したという<かき餅工房 柳屋>にその美味しさの秘訣を尋ねてみました。


美味しさは自然と人の手の、共同作業で出来上がる
<かき餅工房 柳屋>は、洞川温泉の旅館「花あかりの宿 柳屋」が営む工房です。標高830mの高地にあり、冬は厳しい寒さが訪れる洞川温泉郷。昔はどの旅館もシーズンオフにかきもち作りを行うのが通例でした。現在は手間がかかることから、柳屋を含め数軒の旅館だけが製造しているそうです。
かきもちづくりは低い気温と適度な湿度が重要です。例年12月半ば~3月半ばが製造シーズン。息が白くなる工房の中でかきもち作りが始まります。
搗きたての餅を箱に流し込み、中1日寝かせて「かき」作業へ。「かき」とは固まった餅を水平に削る作業。薄く均一に餅を切り出すには、集中力と根気を要します。

食べやすいサイズに成型した後は、約1ヶ月間じっくりと自然乾燥させます。かつては旅館の大広間に並べて干すこともあったそうですが、現在は工房の風通しの良い部屋に。温度計や湿度計で管理することに加えて、重要なのは「空気」の要素。窓を開けたり少し閉めたり、長年のカンで空気の動きを調整します。大自然に包まれた洞川温泉の気候が、少しずつかきもちの美味しさを育てていきます。
乾燥したかきもちは、140度の油と180度の油の2度揚げで完成。丸まらないよう1枚1枚を丁寧に菜箸で広げながら、というひと手間も美味しさの秘訣です。


美味しいおやつの作り手をご紹介
かきもちは旅館柳屋を営む田辺さん一家を中心に、近隣のお母さんたちが製造しています。販売は柳屋売店と発送が中心ですが、最近は関西の一部スーパーでも販売が広がっています。上で紹介したかきもちと並び、キューブ状の米菓子「きりこ」も人気上昇中とか。
洞川温泉を訪れた際はぜひ旅のおやつにおひとつ。

INFORMATION
- かき餅工房 柳屋
- 時間
- 10:00 - 17:00 ※販売は花あかりの宿 柳屋(売店)、地方発送も可能
- 住所
- 奈良県吉野郡天川村洞川489-9
- 入場料
- かきもち(10枚入)650円~、きりこ(120g)450円~ *かきもち・きりこは手作りのため、時期により在庫がない場合があります。詳しくは店頭に確認下さい
- お問い合わせ
- 0747-64-0621