むさし野は山岡鉄舟や谷崎潤一郎にも贔屓にされた歴史ある宿
江戸時代から続く奈良で最も古い宿の一軒。幕末には山岡鉄舟にも愛され、『武蔵野楼』としたためた横軸も残されているほか、昭和の文豪、谷崎潤一郎が常宿としていたことでも有名です。眼前に若草山を望み、四季折々の自然が楽しめる部屋では、宿泊だけでなく、食事での利用ができることをご存じでしょうか。
中でも、奈良の郷土料理を満喫できる『遣水(けんずい)』は、奈良独特の郷土食を取りそろえ、大和の魅力を凝縮した「昼食」として注目を集めています。『遣水』とは、古い言葉で「間食」を言い表す言葉だそう。昔の食事は朝晩の2食が基本だったので、昼食という意味にもなります。

締めは、素麺の食べ比べ。3年囲いの素麺と新しい素麺のどちらが好み?
多めのダシで野菜を炊いた奈良のっぺは、春日若宮おん祭りの際に、神事入りの精進食として食べられています。具材は、地の野菜に加え、大和揚げと呼ぶ薄油揚げ。ダシの浸みた野菜に、ほっこりさせられる一品です。

朴の葉で包まれた料理は、東部地域の名物で、ご飯にちりめんじゃこや漬物などを細かく混ぜ込んだもの。朴の葉がほんのり香り、昔は田植えの間に食べられていたものだそうです。椀物は大和雑煮で、味噌仕立てのおダシに丸餅と野菜がたっぷり。丸餅を取り出し、青豆の粉にまぶして食べるのが昔ながらの流儀です。

締めは、3年囲いの「ひね」素麺と作り立ての素麺の味比べ。ひねは「錬」と呼ばれ、時間を置くことで旨味が増すといわれています。「鮮」と呼ばれる新しい素麺も一緒に味わえるのは実に乙なもの。『遣水』は、奈良のっぺや朴の葉弁当、大和雑煮、素麺の「錬」と「鮮」に加え、季節の焼き魚、野菜の七色和え、奈良漬のセットで3,500円(税・サービス料別)です。

郷土の恵みをいただき、奈良の歴史や文化に思いを馳せる贅沢なひととき
「観光のお客さまだけでなく、地元のお客さまにも奈良の郷土食を知ってほしい」と話すのは、女将の山下育代さん。老舗旅館の風情のある部屋で、古に思いを馳せながら舌鼓を打つ時間は、何ともいえず贅沢なものです。この時ばかりは忙しない浮世を忘れ、悠久の時の流れをゆったり感じてみてはいかがでしょう。

INFORMATION
- 古都の宿 むさし野
- 時間
- ランチ:チェックイン11:30~12:30 チェックアウト14:00 / 宿泊:チェックイン16:00~ チェックアウト10:00~
- 住所
- 奈良市春日野町90番地
- お問い合わせ
- 0742-22-2739