見上げた姿も美しい。日本最古の五重塔
法隆寺は、奈良県北西部に位置する斑鳩町の中心にあります。JR奈良駅から最寄りの法隆寺駅までは電車で10分あまり、大阪からも電車1本で行くことができ、約30〜40分(JR難波〜法隆寺)で到着します。駅から法隆寺へは徒歩約20分、門前までのバスも出ています。
法隆寺の敷地面積は約18万7千平方メートルあり、搭や金堂を中心とする西院伽藍と、夢殿を中心とした東院伽藍に分かれています。境内には飛鳥時代(592〜710年)をはじめとする、粋な木造建築が軒を連ね、日本古代の建築美を間近に見ることができます。
法隆寺の金堂がある西院伽藍のシンボルとしてそびえ立つ、五重塔。正面からの姿は凛々しくも迫力があり、下から見上げると均等に並んだ木々が芸術的で、屋根の裏側までも美しい「搭」です。
「搭」とは釈尊の遺骨を奉安するためのもので、「仏塔」とも呼びます。仏教寺院において最も重要な建物とされており、五重塔も仏塔形式の一つになります。また五重塔は下の階から「地」、「水」、「火」、「風」、「空」と、五大(古代インド哲学や仏教において、万物を構成するとされる5つの要素)を示しており、仏教的な宇宙観が表されていると言われています。

時空を超えて伝わる、法隆寺の七不思議
ある地域や場所において伝えられる不思議な現象を「七不思議」と言いますが、じつは法隆寺にも南大門の前にある魚の形をした大きな踏み石の存在や、境内の池に住む蛙はすべて片目だという言い伝えなど、「法隆寺の七不思議」と呼ばれるものがあります。
その一つに「五重塔の九輪の鎌」があります。五重塔の屋根には、9つの輪を串刺しのようにした形の九輪(くりん)と呼ばれる飾りが建っています。この九輪をよく見ると、鎌が4本付いているのが分かります。かつては「鎌が勝手に動く」と言われたこともあったようですが、この鎌は聖徳太子が怨霊封じのために付けたという説もあります。実際には雷よけと言われています。でも本当に不思議です。鎌の付いた九輪は他の寺院にはなく、「なぜ付けられたのか」と想像するのも楽しいでしょう。
また、西院伽藍の廻廊でひと際目を引くのが、上と下の部分が徐々に細くなる「エンタシスの柱」です。古代ギリシャ時代につくられたパルテノン神殿の柱と同じだと言われていますが、法隆寺の柱は日本独自のものと考えらえています。当時の宮大工の思慮深さと、優れた技術に驚かされます。
見どころは満載。
細部にまで行き届いた高度な技術もまた魅力
現存する木造建築としては世界最古のものとして知られている、法隆寺の五重塔。この最下層内部の東西南北それぞれの面には、奈良時代はじめに造られた塑像(そぞう:粘土や石膏を材料として作った像)群があるのをご存知でしょうか。釈尊の入滅や弥勒菩薩の説法などの場面が表現されており、その顔は細やかで、人間味あふれる表情のため、目が奪われます。
飛鳥時代の姿を現在に伝える法隆寺。世界最古の木造建築物として見るだけでなく、実際に木に触れてみて、ぬくもりや先人たちの素晴らしい技術力を感じるのも楽しみ方の一つです。
派手さはありませんが、来る人をやさしく包み込むような、堂々たる存在感を放つお寺です。1300年という長い歴史を辿ってきたロマンを感じながら、歩いてみるのはいかがですか。

INFORMATION
- 聖徳宗総本山 法隆寺
- 時間
- 8:00〜17:00(2/22~11/3)、8:00〜16:00(11/4~2/21)
- 入場料
- 拝観料(西院伽藍内、大宝蔵院、東院伽藍内共通)一般1,500円、小学生750円
- お問い合わせ
- 0745-75-2555