
子どもたちの時代にも、美しい吉野を残していくために。
近年、吉野を訪れる外国人旅行者が増えているという。ローカルな旅をしたい、より深い日本を知りたいという旅人にとって、長い歴史文化を持ち、自然に包まれた吉野はふさわしい土地と言えるでしょう。
同時に、滞在場所として人気を集めているのが「旅館 歌藤(りょかん かとう)」。2011年頃から積極的に外国人旅行者を受け入れ始め、今では宿泊客がすべて外国人である日も珍しくないそうです。
「どうやって吉野という土地を次の世代につなげていくかと考えた時に、国内だけでなく国外にも、吉野のファンを作らなければと思いました。そこで海外への発信に力を入れ始めましたが、こうやって訪れてくださる方が増えたのは、ほとんどお客様のクチコミのおかげですね」と、歌藤順子さん。
江戸時代から続く旅館 歌藤の女将であり、四児の母でもある彼女には、過去から未来へ伝統を受け継ぐ、使命感のようなものが感じられます。

「人が好き」という気持ちとプロの気配り。
日本の旅館では、主人よりお客様に接する機会が多いのが女将。旅館のすべてを把握していると言っても過言ではありません。
「客室係からは、常にお客様の様子を聞きます。特に、どんなタイミングで笑顔がこぼれたかは重要です。笑っていただけたと聞くと、よし、よかったなと思うんです」と歌藤さん。
「旅館は、旅行者と地元の人間が関われる場所。こちらは、1人ひとりのお客様の思いをすばやく察して、その方に応じたおもてなしができるようにと考えています。客室数が14室と多くはないので、お客様との距離感は保ちながらも、まるで大きな家のように、家庭的な雰囲気の中で安心感を提供できたら嬉しいですね」。
相手の心にまで届くおもてなしと、天性の洞察力で身につけた語学力とユーモアにより、旅館 歌藤の予約サイトのレビューは、サービスの満足度が特に高くなっています。

吉野の自然を感じながら、ゆったりと過ごせる空間。
豊かな森林に恵まれた吉野は、吉野杉と呼ばれる高級材の産地。旅館 歌藤の建物には、この吉野杉や檜がふんだんに使われています。特に手造りのログ館は、客室にも丸太が組まれ、木と畳の温もりにホッと心落ち着きます。
また、珍しい吉野の川石を使った露天風呂も自慢。館内のどこにいても、地元の天然素材が心身をリラックスさせてくれるのです。もちろん、一歩外に出ればそこは空気が澄み渡った山の中。奥千本(吉野山の最も山奥にあたるエリア)まで散策するのが歌藤さんのオススメです。見晴らしが良く、歴史もより濃く感じられると旅行者に好評だそうです。
「当館はヨーロッパからのお客様が多いのですが、静かに吉野の自然を味わっていらっしゃいますね。朝、下千本(山裾)までジョギングをされたり、奥千本まで歩いて行かれたり。昔から“吉野の人は木と会話する”と言われるほど自然を身近に感じられる土地です。ゆっくりと時間を過ごしていただけたらと思います」。
吉野手漉き和紙や葛菓子など伝統文化体験もアレンジ可能なので、希望者はぜひ相談してみてください。


PROFILE
- 旅館 歌藤