
うちはマニアック。ほんまにうまいと思うもんだけ置いています
「酒は蔵を出て終わりじゃない」と蔵元は言います。管理も思いも信じて託す、蔵と客との良き繋ぎ手となる酒販店あってこそ。「生命線」とさえ思い、絆は太く結ばれます。 そんな酒販店の一つが、登酒店です。「奈良のうまい酒はどこにある?」。旅に出ればその地の酒が飲みたいもの。県外からも、時に国外からも、地酒ファンが目を輝かして訪れます。「うちはマニアック」と笑うのは、4代目の登和哉さん。「ほんまにうまい。この酒飲んで。そう思うもんだけ置いてます」。

奈良の酒は今、こんなにもおもしろい
「奈良の地酒は全国的に見てもバリエーションが豊かで、非常におもしろいんですよ」。その酒造りの歴史は大層古いもの。ところが京都に都が遷った後は主流から取り残されてきました。多くの蔵が独自のブランドを造り出したのは近年のこと。「昔から酒処と名高い地にはそれぞれ確立されたブランドのイメージがあります。それが奈良にはありませんでした。フルーティ路線あり、骨太路線あり、土地のイメージにとらわれることなくそれぞれの蔵元が自分の目指す酒へと、新しく進み出したのです。だから今、奈良の地酒ファンは、個性ある蔵元の酒を、とりどりに楽しめます」。

蔵と人を繋ぐのは酒屋の役目。イベントを開き、情報を発信
実家の酒屋を継ぐ前は華やかなアパレル業界にいたという登さん。ある日、同世代の青年が酒造りに打ち込む姿に胸を突かれ、父と蔵元である青年との深い信頼関係も知り、「これこそ自分が本当にすべきこと」と決心。今では立派な酒屋の若大将です。 蔵と人を繋ぐのは酒屋の役目と心得て、「日本酒の会」を開いて蔵元の話を聞いたり、蔵見学ツアーも開催。ホームページやSNSも充実させています。新しい酒が入れば蔵元から思いを聞き出して、自らの目と舌、登酒店のフィルターを通して発信。奈良の地酒の良き繋ぎ手として、その魅力を伝えています。

PROFILE
- 登酒店